LCA(ライフサイクルアセスメント)で壁面緑化を検証したら、環境負荷が高かったという事実

以前、環境あれこれというコラムにLCAのこと書いたが、昨年10月号の日経エコロジーに興味深い記事が掲載されていた。
要旨を引用すると、
打ち水や緑のカーテンなどのヒートアイランド対策が環境影響にどの様な影響を及ぼしているかはあまり知られてない。
産業技術環境研究所の玄谷氏は、「ヒートアイランド対策といえば夏の効果ばかりが注目され、地球温暖化対策と切り離して論じられているのはおかしい」と考えて施工面積当たりの年間換算CO2排出量を基に、5種類のヒートアイランド対策を比較研究した。その5種類とは、
① 光触媒コーティング
② 高反射塗料(屋上)
③ 高反射塗料(側壁)
④ 屋上緑化
⑤ 壁面緑化
都内のある同じ場所で、この5種類について1年間の実測気温データを用いて評価した。
評価では、製造・運用段階と建物の空調使用段階の2パターンでCO2排出蔵原料を測定し、合計のLC CO2(ライフサイクルCO2)を求めた。
その結果、
高反射塗料が最も気温低減効果が高く、夏の冷房需要を大幅に下げられるが、冬も熱を大幅に反射してしまうために寒く、暖房需要が大幅に増加する。
通年を通して評価すると夏の冷房削減効果よりも冬の電力需要の方が僅かに大きい、高反射塗料は採用時のイニシャルコストが安いので採用されることが多いが、電気料金等のイニシャルコストが高くなるので採用には注意が必要だ。
製造・運用段階では、光触媒、屋上緑化、壁面緑化の順にCO2排出量が大きい、なかでも、壁面緑化はビルの壁面などの高所に設置するために、ボルトを使って固定する。その土台となるステンレスの環境負荷が高い割には、空調負荷が減らせないために、5種類のなかでは最もLC CO2が高い結果になった。
企業が壁面緑化をする場合は、環境配慮より自社の宣伝効果を求めてのことが多い。
今後はどのようなヒートアイランド対策を講ずるべきか、初期コストだけではなく、LC CO2バランスも考えた導入が必要とのことだ。

私は、壁面緑化や屋上緑化がLCAの観点からは、環境負荷が高いことを今まで知らなかった。常々環境問題を解決するに当たり、思い込みや感情だけでは解決にならないと考えている。
私の住んでいる板橋区では、小学校で緑のカーテンを推進しており、環境教育的な観点からも高評価をされているし、自分自身は緑のカーテンを推進することが良いことだと思っていたので、何とも複雑な心境である。