私の加入しているオール電化JPという会のメルマガは、今回とても興味深い内容なのでそのまま紹介させて頂きます。

船瀬俊介さんの「真実(ホント)は損するオール電化住宅 あま~いワナと、にが~い現実」(三五館)という本が2009年1月30日に出版されました。
船瀬さんは、2005年9月にも、「やっぱりあぶない、IH調理器―電磁波の被害を、第二のアスベストにするな 」(三五館)を出していて、『IHの電磁波を浴びることで、“ガン”や“白血病”になる』と信じ込んでいる方です。
どちらの本も、
 ・都合の良い証拠だけを取り上げ(反論は一切無視)
 ・はじめから結論ありき(原発反対)、でこじつけた
信用性の低い内容です。
でも、こんな本でも一般ユーザーには、信じられてしまうのが怖いところです。
先日も、ある施工店さまから、「お客さんが読んで、“オール電化は悪”と思い込んでる」と言われました。
たしかに、内容はひどいですけど、“煽り方はお見事”。その手の本をずっと書いている手練れですから、情報の少ない一般ユーザーを煽るテクニックはさすがです。
でも、ちょっと勉強すればボロが出まくりですけどね(笑)。
この本の“突っ込みどころ”を列記してみましょう。
・公取委の九州電力パンフへの「排除命令」を、鬼の首を取ったかのように取り上げ“オール電化はおトク、というのは真っ赤なウソ”と断言。
※解説 九州電力パンフが、オール電化のおトク感をより有利に誤認させる可能性があったこと
は事実ですが、だから『オール電化はおトクではない』と結論づけるのはこじつけです。
「九州電力のパンフはウソだった。だから、オール電化がおトクというのもウソだ」という、こじつけ論法です。
九州電力パンフが言うほどおトクではない、けど、ガス併用よりオール電化の方がおトク、というのは動かないでしょうね。
●・あきれるほど短命な「エコキュート」、「IH」で、“買い替え地獄”に陥ると断言
公取委の「排除命令」の中から、『エコキュートの耐用年数は10年ないし15年程度、IHクッキン
グヒーターの耐用年数は8年ないし15年程度と言われており』という部分をピックアップし、“寿命の短さにおどろきます”とコメント。
“200年住宅なら、エコキュートは最悪20回、IHは24回も買い替えさせられる…!”と“買い替え地獄”になることを示唆。
※解説 耐用年数を最短だけ取り上げた上で、“200年住宅なら20回以上買い替えが発生”と煽ります。買い替え回数の数を多く見せるレトリックですね。
それと、ガス給湯機やガスコンロの寿命について触れないのはフェアではないです。ガス機器の方が、買い替え回数は多いはずですけどね。
・“「エコキュート」は省エネ効果ゼロ”と決め付け
2008年12月26日の朝日新聞で「エコキュート本当にエコ? 出荷時設定では効果薄」という記事が掲載されました。これを引き合いに出して、“『エコキュート』に省エネ効果はない!”と断言。
※解説 朝日新聞の記事は、『設定によっては、エコキュートは省エネにつながらないことがある。省エネになる設定で使うようにしましょう』という建築環境・省エネルギー機構の調査結果を下敷きにしています。その“設定によっては”という部分を故意に削って、「エコキュートは省エネにならない」と読者を誤解させます。
このように、“前提条件をはしょって、決め付ける”というのが船瀬さんの得意技です。・IHの発熱のしくみは“コッケイ”とし“電気を熱に変える。それなら、ニクロム線やラジエントヒーター方式などで十分。(IHは)あいだに電磁波エネルギーが入るぶんロスが発生するのは当然”と決め付け
※解説 コッケイですね(笑)。たぶん、IHの熱効率と、ニクロム線やラジエントの熱効率との比較をしたことがないのでしょう。ニクロム線やラジエントでは、十分な火力を得られなかったからIHが普及してきたんですけどね。
・IHは“欧米ではほとんど売上げゼロ”、“ヨーロッパやアメリカのひとびとにとって「電磁波は有害」なのは常識”と決め付け
※解説 懲りもせずに、この論旨ですか(笑)。日本人の欧米コンプレックスを巧みに使っています。
でも、日本電機工業会の「IHクッキングヒーター電磁波Q&A」ページでは、「欧州では年間約50万台のIH需要があり、毎年約1.2倍の需要増が見込まれている」と明記してあります。現実を見てるんでしょうか?

とまあこんな論調です。
しかし、舟橋さんの著書を一度も読んでいないので批判する立場にはないのですが、オール電化JP側の論拠の方が圧倒的に科学的でまっとうな考えであろうと思えます。
この舟橋さんの論調で思い出すのが、最近やたらと多い地球温暖化のIPCCを批判する本が出版されまくっていますが、特に武田某氏の本がやたらと御多いのですが、それらと同じ攻撃的で批判を一切受け容れない論調に似ていますね。
温暖化(気候変動)については、何れ歴史が証明することは自明の理です。しかし批判だけでは、温暖化問題は解決しませんよね。
私は、人類のためにIPCCが間違ったことを全世界に情報発信しているとは思えません。
電気が良いのか? ガスがよいのか?は、東電対東ガスのエネルギー戦争みたいな歴史が昔からありますが、一番大切なことはユーザーに正しい知識や情報を提供する企業姿勢だと思います。
当社では、オール電化、エコキュート、太陽光発電、コジェネレーション、燃料電池などをエンドユーザーに正しい知識と情報を提供出来るように、会社を挙げて学習中です。
その中で、メーカーさんの姿勢に疑問があるのは、どれかを売ろうとするメーカーは、対立する方式のランニングコストを高く設定する傾向があります。
また、長所があれば、当然短所もあるわけで全てがよいという方式はありません。
私が標準的なランニングコストの算定をして欲しいと要望しても、何時も曖昧にされてしまいます。
もっとエンドユーザーのことを考えた姿勢でないと、我々設計や工事に携わる業種にも信用されなくなります。
東電や東ガスは、或いは各メーカーは、もっとユーザーに信頼されるようにならないとね。
我が社も自信を持って売れないよ。
将来的には(もう現実ですが)、「如何に化石燃料を使わずに、自分の使う燃料を創るか」がテーマだと思う。これは「省エネ」から「創エネ」に世の中が変化していることの表れであろう。
だから、太陽光発電と燃料電池の組み合わせだってあるわけだし。
また実際にそれをやっているユーザーは既にいるわけだし。