以下、私が法政大学大学院政策科学研究科の「廃棄物政策」で明治学院大学国際学部熊本教授の講義で学んだ事です。

フェロシルト事件
これは偽装リサイクルの典型である。
フェロシルトとは、石原産業が生産販売していた土壌補強材・土壌埋戻材で、酸化チタンの製造工場から排出される副産物を中和処理して生産されていた。
三重県は、2002年度から「生産物抑制に係る産官共同研究事業」としてフェロシルトの植物育成に係る研究を行っていた。

しかし研究の結果、植物の育成ではなく「抑制」作用があることを確認したにも関わらず、育成促進効果があると宣伝し、2003年には県の「リサイクル製品利用推進条例」に基づくリサイクル製品に認定までしてしまった。
ところが、2005年にはフェロシルトに環境基準を超える六価クロム、フッ素、放射性鬱し角ウランやトリウムなどが含まれていることが判明した。
その結果石原産業の幹部が逮捕される事態にまで進展した。
これは官民が共謀した、有害製品を推奨品とした「偽装リサイクル」であった。

鉄鋼スラグの環境汚染
鉄鋼スラグは、製錬工程で出る残りかすで、高度成長時代から海面埋立材としてだけではなく、路盤材やコンクリート骨材として利用されてきた。
しかし、公共工事の減少に伴い、鉄鋼スラグが供給過剰状態となり、鉄鋼メーカーは売れなくなった鉄鋼スラグを産廃処理せずに、有価物としての販売を偽装した「偽装リサイクル」横行し環境汚染をもたらす。

「偽装リサイクル」によって購入された鉄鋼スラグは、雨ざらしのまま野積みにされ、ホウ素、ヒ素、鉛などが溶出し、強アルカリ性の汚水が土壌を汚染し、周囲の植物を枯らす。
またそれが乾燥すると粉じんが舞い周辺住民の健康を害する。

溶融スラグの危険性
ガス化溶融炉や灰溶融炉は溶融スラグ化することにより、処分場が不要になるとの触れ込みで普及してきた。
溶融スラグは鉄鋼スラグと同様に、路盤材やコンクリート骨材として利用されている。
しかし、その路盤材は不安定な物質なために、土壌に浸透して主に鉛が溶け出す。

産廃がリサイクル製品になる仕組み
「グリーン購入法」は、国や自治体が環境負荷の小さい製品を優先的に買うことを義務づけることを目的として2000年に制定された。
しかしこの法律に基づく特定調達品目に、「公共工事に係る品目」として地盤改良鉄鋼スラグ、鉄鋼スラグ混入アスファルト混合物、鉄鋼スラグ混入路盤材が指定されている。

国交省や愛知県は、三河湾で鉄鋼スラグによる人工干潟造成計画の実証事業を進めている。
同様に千葉県三番瀬でも人工干潟造成実験が始まっている。
鉄鋼スラグが鉄鋼スラグ混入路盤や鉄鋼スラグアスファルト混合物などのリサイクル製品に混入されると、それらは長年の酸性雨に曝露され、
有害物質は溶け出し、長期的には環境汚染をもたらす危険性が大きいと思われる。

行政が後押しする産廃の利用
フェロシルトが三重県のリサイクル製品に指定されたる、
鉄鋼スラグが「グリーン購入法」の特定調達品目に指定される。
はたまた工干潟造成に使用されたり、溶融スラグがJIS規格化される等々。
これらの一連の動きには、行政が産廃を混入したリサイクル製品の普及を積極的に推進していることが分かる。
更に言えば、日本の循環型社会づくりは、「産廃をリサイクル製品に含めて合法的に環境中に撒き散らす仕組み」をつくったと見る事が出来る。

産廃として処分すればコストが高くつくが、リサイクル製品にして売れれば収入になる。

「グリーン購入法」が特定調達品目の「公共工事に係る品目」を次々と追加指定することにより、今や鉄鋼や建設などの基幹産業を公共工事が支える法律に肥大化してしまった。
その公共工事に係る品目」には、ダイオキシンや有害物質を高濃度に含むフライアッシュを使用した、「フライアッシュセメント」や「フライアッシュを用いた吹きつけコンクリート」まで指定されている。
フライアッシュセメントとは、火力発電所などの微粉炭ボイラーの燃焼排ガス中から回収される微細な石炭灰であるフライアッシュを混合材として用いたセメントである。
フライアッシュはヨーロッパでは放射性物質同様の厳重な管理がされている。
しかし日本ではリサイクル製品にされており、フライアッシュセメントは「グリーン購入法」の「公共工事に係る品目」に指定されている。

以上、講義ノートを整理してみたが、なんともやりきれないですね。先に書いた日本の政策の意思決定システムと同様に、国民は行政と大企業にいいようにされているのではないかとさえ勘ぐりたくなる。
公務員も大企業の社員も同じ国民のはずなのに、自分の国をこれ以上汚染してどうするんだろう?
高級官僚や大企業の社員は自分の子供に大切な地球環境を残そうという意識はないのかな~?